ミトコンドリアDNAとは
ミトコンドリアDNAとは、細胞内小器官のひとつである、ミトコンドリア内に存在するDNAのことです。
主にミトコンドリアの持つタンパク質等に関する情報が含まれており、ミトコンドリア自体が増殖・分裂する際には複製され、その遺伝情報は保存・伝達されています。そもそもミトコンドリアは、動植物や菌類等ほとんど全ての生物の細胞に広く含まれている、細胞内構造物の一つです。
ミトコンドリアはエネルギー生産や呼吸代謝の役目を持つ特殊な器官で、細胞の種類によって異なりますが、一つの細胞に数十から数万という膨大な数が含まれています。独自の環状DNAを持っており、分裂するときに複製倍加します。
ミトコンドリアDNAを利用した研究
ミトコンドリアDNAは、核DNAに比べて塩基置換の起こる速度が速いこと、母性遺伝であること、ミトコンドリアDNAの数が多いといった特徴があることから、生物の進化を研究する上で非常に有効なツールとなっています。特に、母性遺伝であるという特性を活かし、人類の系統や移住の足跡をたどるために利用されてきました。
例えば、ヒトの場合、父親と母親の間にできた子どものミトコンドリアは、母親のミトコンドリアDNAを受け継ぎ、父親のミトコンドリアDNAは受け継がれません。
この特徴を利用し、実際にアフリカ、ヨーロッパ、アジアの女性のミトコンドリアを採集して、その祖先を辿る研究が行われました。この研究により、アフリカ人が最初に分岐するグループだということが判明し、さらに、このグループをたどると約17万年前に生きていたアフリカの女性に行き当たったのです。これをミトコンドリア・イブと呼びます。
しかし、ミトコンドリアDNAは母性をたどることしかできないため、人類の系統や移住の足跡をたどるためには、学問的に不十分だとも言われています。そこで最近では、ミトコンドリアDNAを利用するだけでなく、父系の系統のみをたどることができるY染色体の分析と併せて検証する方法がとられています。
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