研究用語辞典

ゴムとは

化学系

最終更新日:2023.04.17

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概要

ゴムとは、元来は植物体を傷つける等して得られる無定形かつ軟質の高分子物質のことです。現在では、天然ゴムや合成ゴムのような有機高分子を主成分とする一連の弾性限界が高く弾性率の低い材料、すなわち弾性ゴムを指すことが多くなっています。

性質

天然ゴム
天然ゴムの主成分はイソプレンという単純な分子構造で、分子内に2個の二重結合を持つ分子が重合したものです。構造は単純ですが、天然ゴムの人工的な合成は簡単ではなく、人工的にイソプレンを重合するとグッタペルカと呼ばれるものになります。グッタペルカも天然樹脂ですが、硬くて、ゴムのような弾性はありません。ゴムとグッタペルカの違いは、ゴムの二重結合がシス配置なのに対し、グッタペルカはトランス配置であることです。
しかし、現在ではチーグラー・ナッタ触媒を用いた配位重合によって、天然ゴムと同じシス配置を持つものが合成されています。このようなゴムを特に合成天然ゴムといいます。
合成ゴム
ブタジエンを重合したゴムはブナゴムと呼ばれ、高い反発弾性を持つためよく弾みます。お祭りのスーパーボールの原料にもなっています。また、イソプレンのメチル基が塩素に代わったクロロプレンからできるクロロプレンゴムは最初に商品化された天然ゴムです。
2種類のモノマーからなるコポリマーのゴムも開発されています。SBRはスチレン(S)とブタジエン(B)からなり、最も大量に生産されている合成ゴムです。NBRはアクリロニトリル(N:ニトリル)とブタジエン(B)からなりますが、耐油性が強いため、石油用のパイプ等に使われます。
エチレンとプロピレンからなるEPゴムは二重結合を持たないゴムです。このため耐劣化性が強く、自動車部品や電線の被覆等に使われています。

活用例

ゴムはタイヤやベルト等の工業用をはじめ、衣料用等として日常生活の隅々にまでいきわたっています。代表的なゴムの構造と特色・用途例は表の通りです。

代表的な合成ゴムの構造と特色・用途例(表)

合成ルート、作製・精製方法

最も大量に生産されているSBR(スチレン-ブタジエンゴム)を例にとります。 SBRはスチレンとブタジエンとの共重合体に加硫することで得られます。スチレン含有率23.5%のものが主流です。

mCH2=CH-CH=CH2 + nCH2=CHC6H5 → [-(CH2CH=CHCH2)m-CH2CH(C6H5)-]n

歴史的背景

(1)ゴムの発見

ゴムの発見の通説は、コロンブスが2回目の新大陸公開の時(1943~1496)に、ハイチ島で原住民の子ども達が樹液から作った黒いボールで遊んでいるところを目撃し、帰国後に報告したことと言われています。この後、200年余りはあまり利用価値がなく、おもちゃや防水布として使用されるのみでした。

(2)ゴムの加硫方法の発見

原料ゴムにカーボン等補強材を混合し、さらに硫黄や助剤を加えて加硫すると強靭且つ弾力性を兼ね備えたゴム製品が出来上がります。これを「加硫ゴム」と呼びます。このゴムの加硫方法の発見が、現在に至るゴムの需要拡大につながる結果となりました。ゴムの加硫方法は1839年にアメリカ人のチャールズ・グッドイヤーにより発見されました。さらに4年後、イギリス人のトーマス・ハンコックが加硫ゴムの本質がゴムと硫黄の化学結合の結果であることを発見し、様々な加硫方法を開発し加硫技術を確立しました。これによりゴムは工業用材料として需要が増加していき、ゴム工業が本格的に始まっていきました。

(3)ゴム工業の発展

当時ゴムは南米アマゾン川流域のみでしか採取されておらず、希少なものであることから「黒い黄金」と呼ばれ価格が高騰しました。1876年、世界中に植民地を持っていたイギリスはゴムの苗木を移植し、東南アジア各地にゴムの木を栽培しました。こうしてイギリスは長期間にわたり天然ゴムを独占し、生産地として東南アジアが現在のシェアを誇るようになりました。

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