概要
性質
転写は原核生物、真核生物ともに1個以上のタンパク質因子がプロモーター配列とRNAポリメラーゼの両方に結合したとき、転写複合体が形成されます。 細菌ではしばしば単一のプロモーターから複数の遺伝子が一緒に転写されます。このような転写単位はオペロンとよばれます。真核生物の細胞では普通、各遺伝子がそれ自身のプロモーターをもちます。細菌の細胞には数百のプロモーターがありますが、真核細胞には数千のプロモーターがあります。
大腸菌に最も多いプロモーター共通配列は、転写開始部位の10bp上流と35bp上流に位置し、それぞれ-10領域、-35領域と呼ばれます。-10領域はTATAATの配列が共通していることから、特にTATAボックスと呼ばれています。TATAボックスは真核生物のゲノムにもみられますが、細菌とは異なり転写開始部位の-25領域あるいはさらに上流に位置しています。
共通配列は正確に決まった配列というものではなく、ある位置において最も頻繁に見出されるヌクレオチドを示すものです。共通配列と完全に一致しているプロモーターはほとんど存在しません。AやTが占めるべき位置にGやCが位置している整合性の弱いプロモーターもあり、こういったプロモーターは弱いプロモーターと呼ばれ、転写頻度の低い遺伝子につながっています。一方でrRNAオペロンのプロモーターのような共通配列にきわめて似ているプロモーターを持つものは高い頻度で転写されています。こういったプロモーターの整合性によって、遺伝子の産物があまり必要のないものには効率の悪いプロモーターが、大量の遺伝子産物が必要なものには効率の良いプロモーターがそれぞれ細胞の要求に沿って最適化されています。
活用例
- T7プロモーターおよびT7 RNAポリメラーゼを利用した一本鎖RNAの合成
- T7プロモーターをもつベクタープラスミドを利用した大腸菌でのタンパク質高発現
歴史的背景
単一のプロモーターから複数の遺伝子が一緒に転写されるオペロンは、1961年にフランソワ・ジャコブとジャック・モノーによるラクトースオペロンに関する研究の際に初めて提唱されました。
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