概要
モデル生物とは生物学において、普遍的な生命現象の研究に用いられる生物のことです。地球上の生物は大きさも形も多種多様ですが、共通の祖先に由来するよく似た遺伝子を持っています。遺伝子学的研究においては全ゲノム配列のわかっている生物をモデル生物として利用することが多く、大腸菌や酵母は頻繁に利用されています。
性質
モデル生物に求められる性質としては、以下のものが挙げられます。
- 扱いやすいサイズ
- 観察しやすい
- 入手、維持しやすい
- 世代交代がはやい
- ゲノムサイズが小さい
- 遺伝子組み換えができる
代表的なモデル生物としては、単細胞生物では大腸菌、酵母、多細胞生物ではショウジョウバエ、線虫、ゼブラフィッシュ、マウス、植物ではシロイヌナズナ等があります。
活用例
ヒトのモデルとして扱われる生物の代表がマウスです。ヒトの遺伝子数は約3万個ですが、実はそのうちの約99%がマウスと同じです。そこで、例えばヒトのある病気で、多くの患者さんの特定の遺伝子が健康な人の遺伝子と違っていたとすると、その遺伝子が病気の原因である可能性が考えられます。その可能性を調べる方法として、マウスに同様の遺伝子変化を起こさせ、マウスにヒトと同じような症状が出るかを見ることができます。
歴史的背景
昔からモデル生物の代表として扱われてきたのが大腸菌です。その理由として世代交代が最短で20分と短く、寒天培地で同一の遺伝子を持った株が簡単にたくさん手に入るからです。遺伝子組み換え技術が実用化されたのも大腸菌の研究があったからこそであり、現在も大腸菌なしには分子生物学の実験は進みません。
また、真核生物ではショウジョウバエが古くから扱われてきました。ショウジョウバエの産卵数は1日に約50個で、10日ほどで成虫になり、体長が小さいため試験管でも飼育が可能です。アメリカの遺伝学者モーガンが白い眼の突然変異を見つけて以来、体の色等の変異も見つかり、それらの研究から染色体地図が明らかにされました。
大腸菌やショウジョウバエは今でも世界中の研究者が利用しています。世界中の研究者が、同じモデル生物を扱うことで、研究結果や材料を共有し知識を蓄積できるため、効率よく研究を進めることができるのです。
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