研究用語辞典

細胞壁とは

生物学系

最終更新日:2023.07.03

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概要

細胞壁は細胞膜の外側を囲っている細胞外マトリックスです。細胞壁をもつ生物は植物、キノコやカビ等の真菌類、細菌類であり、動物細胞には存在しません。

細胞壁

性質

植物と真菌類、細菌とでは細胞壁を構成する成分が異なります。植物の細胞壁は主にセルロースやヘミセルロース、リグニンから形成されています。一方、真菌類はグルカン、キチン等の多糖類、細菌は糖鎖とペプチドの化合物であるペプチドグリカンが主成分となっています。
植物の細胞壁は、細胞表面に構築される薄い一次細胞壁と、伸長終了後に一次細胞壁の内側に構築される二次細胞壁の2種類に分類されます。一次細胞壁の主要な構成成分は、グルコースが直鎖状に重合したセルロースで、通常は30~36 本のセルロース分子がシート状の束になり結晶化しています。このセルロース微繊維間をキシログルカン等のヘミセルロースが架橋することで、一次細胞壁の格子状の基本骨格が形成されます。化学的に安定なセルロース微繊維間を切断やつなぎ換えの容易なヘミセルロースで架橋することで、一次細胞壁は硬さだけではなく、伸展等を許容する柔軟性を兼ね備えているのです。二次細胞壁はリグニンを多く含み、導管や繊維等の細胞をより強固な構造にしています。
真正細菌の細胞壁に特徴的なのは莢膜の存在です。莢膜とは細菌が分泌した多糖やポリペプチドが形成する細胞表面の層のことであり、生物学的には莢膜の有無で判別できるグラム染色による分類に利用されています。グラム染色で紫色に染まるものをグラム陽性細菌、紫に染まらず赤く見えるものをグラム陰性細菌といい、グラム陽性細菌とグラム陰性細菌とではグラム陽性の物の方が厚い細胞壁を有しています。

活用例

  • コケ植物の細胞壁が金属を蓄積する性質を利用した排水浄化技術の取り組み
  • 細菌の細胞壁の特徴を利用したグラム染色による分類およびグラム染色を用いた感染症の診断

歴史的背景

ロバート・フックによるコルクガシの顕微鏡観察によって内容物を失った後の細胞壁が観察され、その時にはこの隔壁が細胞壁であることは明らかになりませんでしたが、この構造が「cell=小さな部屋」と命名され細胞の研究の始まりとなりました。

取扱い注意点

グラム染色における注意点
グラム染色では観察しにくい菌種が存在します。また、グラム染色は実施する人の習熟度に結果が左右されてしまうことがあります。

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