研究用語辞典

酵母とは

生物学系

最終更新日:2023.07.03

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概要

酵母とは、生活環の一定期間に栄養体が単細胞性を示す真菌類の総称です。酵母は正式な分類群の名称ではなく、生活型を示す名称で、異なる種を含んでいます。外部の有機物を利用しながら育つ微生物で、古くから様々な食品加工の場で役立ってきた、人間にとってもとても関わりの深い生物です。また、酵母はトウモロコシ、ショウジョウバエ、アカパンカビと大腸菌に続いて、遺伝学研究における重要なモデル生物の1つとしても知られています。

性質

酵母は私たちヒトや植物と同じく細胞内に核を持った真核生物です。光合成能力はなく、外部の有機物を分解吸収することで栄養を摂取します。酵母は食品加工の場面でも大きく活躍していますが、真核細胞の優れたモデル生物でもあります。その理由が次の点です。

  1. 実験室で簡単に操作できる
  2. 増殖が速い(1.5-2.5時間程度)
  3. 病原性がない
  4. 2倍体と1倍体状態が安定して維持される
  5. 1倍体が簡単に接合して2倍体になるため、相補性テストが容易である
  6. 外部のDNAを効率よく形質転換する
  7. 相同組み換え効率が高いため、ゲノムへの狙った通りの変異導入が簡便である
  8. 遺伝的選択が簡便である

食品分野での活用

酵母の種類は約350種が知られており、1つの種類の中にもいろいろな酵母が存在しているため、実際はもっと多くの種類の酵母が存在していると推測されます。現在人間が活用している酵母はその中の3~4つ程度です。酵母は糖類やタンパク質を分解吸収して発酵します。この発酵の過程で発生したアルコールや炭酸ガス等を利用し、お酒等の製品ができます。酵母は培養条件によって様々な発酵をするため、様々な食品の製造に利用されています。
酵母を利用した主な食品として、ワイン、清酒、ビール、焼酎、パン、醤油、味噌等が挙げられます。

発酵とは?

発酵とは、微生物がエネルギーを得るために有機物を分解する過程のことで、分解する過程で生成されるものが人間にとって有益である場合に「発酵」という言葉を使います。一方で、生成物がアンモニア等の不快臭を伴い、人間にとって有益でない場合、「腐敗」といいます。

酵母とヒトの歴史・研究背景

酵母は、古代メソポタミア文明の頃から人々の生活に登場します。メソポタミアで発掘された板碑にはビール酵母を使った醸造の説明がかかれており、紀元前17世紀~14世紀のギリシャでも同様に、酵母を用いた酒造りの様子が残されています。
紀元前から利用されてきた酵母ですが、その発見は今から250年ほど前のことです。アントニー・ファン・レーウェンフックが手作りの顕微鏡で発酵中のビールの中に発見した楕円形のものが、おそらく酵母の発見であろうと言われています。 しかしこの発見は100年以上注目されることはなく、酵母が本格的に研究されるようになったのは1940年代のことです。酵母細胞を単離したり、4つの胞子を1つずつ分離したりする技術が考案されたことで酵母研究の基礎が築かれ、酵母の扱いやすさも手伝って、多くの研究に使用されてきました。酵母は遺伝学的な操作も比較的簡単なため、ゲノムが解読されて以降、トランスクリプトームやプロテオーム等の網羅的解析にも用いられることが多くなり、今後も多くの分野で応用されることが期待されます。

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