研究用語辞典

脳内GPSとは

生物学系

最終更新日:2023.04.17

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脳内GPSとは

脳内の空間認知システムを一言で表現すると、脳内GPSになります。この脳内GPSは、記憶等を司る海馬(Hippocampus)という部位と、その近辺に存在しています。
私たちがどの様に空間認知をしているかを調べるために、オーキフ氏はラットに電極を付けて小さな部屋を走りまわせました。そこで、海馬の神経細胞の活動を観察していたところ、特定の位置に来たときだけ活動する神経細胞がありました。「場所細胞(Place cell)」と名付けられたこの細胞が、自分の位置を記憶していることがわかったのです。しかし、地図の全体がわかっていなければ、自分の位置を正確に把握することはできません。この「経路の全体的な把握」に関わる細胞を発見したのがモーザー夫妻です。
モーザー夫妻は、海馬周辺にある嗅内皮質という部位を観察中に、場所細胞で記憶した位置と位置をつなげてある特定の形になるときに活性化する細胞を発見しました。この細胞を「格子細胞(Grid cell)」と名付けました。この格子細胞で私たちは方向と距離を認知することができるようになり、経路を認知しているといわれています。
海馬と嗅内皮質はネットワークでつながっていることがわかっているので、場所細胞と格子細胞によって脳内GPSが構築されていると考えられています。

ノーベル賞受賞

2014年度のノーベル医学生理学賞において、オーキフ氏とモーザー夫妻が受賞しました。
受賞内容は「脳内の空間認知システムを構成する細胞の発見に対して(for their discoveries of cells that constitute a positioning system in the brain)」です。私たちはどうやって「自分がどこにいるか」を知るのでしょうか?今まで通ってきた道を次回見つけ出せるのは、どういった方法で行っているのでしょうか?新しい道を探し出すのにどうやって見つけているのでしょうか?それは、私たちが空間の中で行方を知ることのできる「脳内GPS」を使っているからです。

脳内GPSの発見寄与

この発見はラットのみにみられるのではなく、実際のヒトにも似た細胞が発見されているので、脊椎動物で広く使われている可能性があります。
この脳内GPSは海馬とその近辺にあり、海馬の委縮が見られるアルツハイマー病において、病気の初期段階でしばし周囲の環境を認識できないという症状が現れます。これは海馬とその近辺に悪影響を及ぼすことが起因ではないかと推測され、こういった患者の空間記憶の認識障害に対する原因解明や防止策の手がかりになるかもしれません。

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